クルーリソースマネジメントのマインドを持った人材を獲得する方法
企業の成功には、優秀な個人の存在以上に、チームとしての機能が不可欠である。この点で、心理的安全性を確保し、組織全体の成果を最大化できる人材の採用が重要である。その最たる例が宇宙飛行士の選抜試験であり、その過程を描いた漫画「宇宙兄弟」は、採用基準を考える上で非常に参考になる。宇宙飛行士の選考では、単なる学歴や個人の能力以上に、チームの成功を最優先できる「ライトスタッフ」のマインドを持つ人物が求められる。
映画「ライトスタッフ」において、一匹狼のチャック・イエーガーは宇宙飛行士には選ばれなかった。彼は卓越した操縦技術と勇敢さを持っていたが、宇宙飛行士に必要なのは「個の力」よりも「チームワーク」を最大化する力だったためである。現代の企業も同様に、組織の持続的成長には個々の能力の高さだけでなく、クルーリソースマネジメント(CRM)を体現できるマインドを持つ人材が不可欠である。
クルーリソースマネジメント(CRM)とは
CRMとは、主に航空業界で発展した概念であり、チーム内の円滑なコミュニケーションと協力を通じて、安全かつ効果的な業務遂行を図る手法である。これには以下の要素が含まれる。
1. 状況認識(Situational Awareness)
自分やチームが置かれた状況を正しく把握し、変化に柔軟に対応できる能力。
2. 意思決定(Decision Making)
限られた情報の中で、チーム全体の成功を考慮した最適な決断を下す能力。
3. コミュニケーション(Communication)
自分の意見を適切に伝え、相手の意見にも耳を傾ける協調的な姿勢。
4. リーダーシップ&フォロワーシップ(Leadership & Followership)
必要に応じてリーダーとして決断を下すと同時に、他者の指示を的確に受け入れ、実行する柔軟性。
5. ストレス管理(Stress Management)
プレッシャーの中でも冷静さを保ち、チームの士気を維持する能力。
このようなCRMのスキルは、企業においてもプロジェクトの成功や安全文化の構築に大きく貢献する。
CRMマインドを持った人材を採用する方法
では、企業がこのような人材を採用するには、どのような方法を取るべきか。
1. 選考プロセスで「協調性」を重視する
・面接やグループディスカッションを通じて、応募者がチームワークを重視できるかを確認する。
・他者の意見を尊重しつつ、自らの意見を適切に述べられるかを観察する。
2. グループワークを活用する
・宇宙飛行士選抜試験でも実施される「閉鎖環境でのグループワーク」は、CRMスキルを見極めるのに有効である。
・例えば、応募者を複数人のチームに分け、協力して課題を解決するワークショップを行い、チームの成功にどのように貢献するかを評価する。
3. ストレス耐性と判断力を試すシミュレーション面接
・あえて困難な状況を提示し、応募者がどのように冷静に対処するかを観察する。
・特に、他者と協力しながら問題を解決する姿勢を評価する。
4. 過去の経験を深掘りする行動面接(Behavioral Interview)
・「これまでチームで困難を乗り越えた経験を教えてください」といった質問を通じて、CRMマインドを持っているかを判断する。
・「個人の成果」よりも「チームの成果」をどのように優先してきたかを重視する。
5. 心理的安全性の確保を前提とした採用基準を作成する
・応募者が安心して意見を述べられる環境を整えることが重要である。
・その上で、リーダーシップとフォロワーシップのバランスを見極める。
まとめ
企業が持続的に成長し、組織の力を最大限に発揮するためには、CRMのマインドを持つ人材を採用することが不可欠である。宇宙飛行士の選抜試験に見られるように、高い個人能力だけでなく、チームワークを最優先する「ライトスタッフ」の精神を持つ人材こそが、組織の成功を支える。採用プロセスにおいて、グループワークや行動面接などを活用し、チームのために貢献できる人材を見極めることが、企業の競争力を高める鍵となる。