アメリカの首都ワシントン近郊の空港で、乗客と乗員あわせて64人を乗せた旅客機とアメリカ軍のヘリコプターが衝突した事故について
FAA(米国連邦航空局)によると、現地時間1月29日午後9時(日本時間30日午前11時)ごろ、首都ワシントンD.C.のレーガン・ナショナル空港の滑走路33へ進入していたPSA航空(JIA/OH)のMHI RJ(旧ボンバルディア)CRJ700型機(登録記号N709PS)が、米軍のヘリコプターH-60と空中衝突した。PSA航空はアメリカン航空(AAL/AA)の地域路線を受託しており、「アメリカン・イーグル」ブランドのウィチタ発ワシントンD.C.行きAA5342便として運航していた。
関係位置

関係位置は上図の通り。
レーガン・ナショナル空港の北西約2.5km地点に米国国防総省(通称ペンタゴン)があり、北約5.3kmにはホワイトハウスがります。
通常空港の管制圏は半径9kmなので、この空港は管制圏内にヘリの離発着が多いホワイトハウスとペンタゴンを抱えており、かつ首都ワシントンD.Cにおける玄関として発着便数が多く、トラフィックが錯綜する大変忙しい空港であることが理解できます。
空港の離発着の統制状況
レーガン・ナショナルでは、より広範な地域で航空機の騒音曝露を制限するための重要な戦略は、水上での航空機の動きを最大化し、人口密度の高いコミュニティでの航空機の動きを最小限に抑えることです。FAAは、航空交通と気象条件が許す限り、ポトマック川とアナコスティア川に航空機を一般的に配置するために、地域の禁止空域制限に準拠した到着および出発手順を発行します。川の回廊に隣接する一部の自治体では、航空機の騒音が発生します。
P禁止空域(P-56AおよびP-56B):ワシントンDC空域は、レーガンナショナルの北1.5マイルに位置する禁止空域により、FAAのナショナル空域システム内でユニークです。現在の禁制空域は、1930 年代にさかのぼる大統領令から発展しました。1960年代半ばまでに、それはタイトル14、連邦規則集、パート73に成文化され、禁止空域P-56に指定されました。P-56空域内では、U.S.ナショナルモール、ホワイトハウス、海軍天文台付近での民間航空機および民間航空機の運航は禁止されています。FAAと米国シークレットサービスは、P-56空域を施行し、すべてのP-56空域違反を調査します。連邦政府は、規制に違反していることが判明したパイロットに対して法的措置を取ることができます。P-56のエアプセース違反の罰則には、パイロットの免許の取り消しと懲役が含まれる場合があります。現在、P-56の禁止空域は、AとBの2つのサブエリアで構成されています。
P-56B型: 米国副大統領の本拠地である米国海軍天文台の半径0.5マイル以内の空域で構成される禁止空域。
P-56A型: リンカーン記念館の西側から米国議会議事堂の東側までの地域、およびKストリート(北側)とインディペンデンスアベニューとサウスウエストフリーウェイの組み合わせ(南側)の間の米国ナショナルモール空域で構成される禁止空域。P-56Aの禁止空域には、米国大統領の自宅であるホワイトハウスが含まれています。ノースフロー出発:
- 北/北西: 北/北西に出発する航空機は、P-56 禁止空域を飛行しないように、直ちに左旋回を開始する必要があります。航空機は北西に約 10 マイル進み、ポトマック川の位置にほぼ近づき、アメリカン リージョン ブリッジに向かい、目的地に誘導されます。北/北西に出発する航空機に割り当てられた 2 つの標準的な FAA 出発手順は次のとおりです。
- ナショナルファイブ*
- ラジールファイブ(RNAV)*
- 北/北東:北/北東に出発する航空機は、P-56の禁止空域を飛行しないように、直ちに右旋回を開始する必要があります。航空機は、アナコスティア川の位置に近似する約 5 マイル北東に進み続けてから、目的地に誘導されます。
ノースフロー到着:南から到着する航空機は、通常、空港の南5〜10マイルでポトマック川に合流します。航空機は北上を続け、滑走路 01 または 33 への最終進入を行います。
DCA Reagan National - Aircraft Procedures
今回の事故の背景的な要因
- 管制圏内に航空機が離発着する重要施設が散在していること
- 要人空輸が頻繁にあり、軍の航空機が航空管制上優先的な取り扱いを恒常的に受けていた可能性があること
- 大都市に近接する空港でかつ飛行禁止空域が管制圏内に設定されており、飛行経路が限定されて騒音苦情対処の観点から低空の飛行は川の上に限られていたこと
- 夜間飛行中であり、空港に着陸する低空飛行中の旅客機の灯火が街明かりに溶け込みやすかったこと
等が考えられますが、現状では米国国家運輸安全委員会 (National Transportation Safety Board、NTSB)の調査結果を待つしかないと思います。